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ゲームの企画やシナリオを仕事にしている8が、自分の活動を掲載していくブログです。同人の情報も掲載してあります。
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<pixivが読みにくいという声を受け、pixivにあげた同タイトル小説と同じものをブログに転記しました>


「これでよし……っと」

額にうっすらにじむ汗を拭いつつ、私は約30分ぶりに作業の手を止めた。
たぶん、ここまでに大きな失敗はないはず……。自信ない……けど。
でも、巴さんに教えられたとおりのレシピで作ったし、美樹さんは料理は気合いだって教えてもらったし、佐倉さんは何度も試食してくれたし……。
うん、きっとこれで大丈夫なはず。
あとは、これが上手く焼けてくれるのを待つばかり。
私は祈る思いで型に生地を流し入れ、オーブンの中にそれを入れた。

バタン

重い音を立てて、鉄製の扉が閉まる。
ホントにこれで大丈夫だよね……。何か入れ忘れてる物とかないかな。
さ、さっき入れた白い粉、あれはちゃんとお砂糖だったよね?
何度も確認したはずだけど、まさか間違えてお塩を入れてるなんてことは……。

居ても立ってもいられなくなった私は、急いで台所の上を確認する。
でも、当然のごとく台所にある袋には大きな文字で「上白糖」と書かれていた。
良かった。これで間違いはないはずよね。
いけないいけない。こんなことじゃ美味しい物は作れないわ。
みんな口を揃えて言ってたわ、料理は気持ちが大事って。私が弱気になってたら、料理も美味しくなくなっちゃう。
大丈夫、きっと大丈夫。お菓子さん、頑張って美味しくなってね。

ピッ

私の一大決心とは裏腹に、軽い電子音が部屋に響く。そして、小さな音を立てて動きだすオーブン。
もう後戻りはできない。あとは待つばかり。
はぁ……緊張するなぁ……。
こんなに緊張するのはいつ以来かな。

初めて鹿目さんに会った時もこんなに緊張しなかったし、こっ、告白された時だって……。
そもそも、告白された時は頭が真っ白になっちゃって、黙って頷くしか出来なかったもの。
……そう言えば、私まだちゃんと鹿目さんに告白の返事をしてない……?
思い返せば、鹿目さんに好きって言われた後も黙って頷くか、『わ、私も……』としか言えてないかも……。
ちゃんと言わなくちゃ。今日、コレを渡す時に……。

でも、なんて言おうかな。やっぱり、ストレートに『好きです』とか?
無理無理、絶対無理。そんなこと言ったら、気絶しちゃうかもしれない。
手紙を一緒に渡すなんてどうかな? 面と向かっては言えないけど、これだったらちゃんと伝えられる気がする。
そうと決まれば、便せんと封筒を用意しなきゃ。

私は自室に戻ると、手紙を書くべく準備を始めた。
いざ探すと、なかなかピンと来る便せんってない物ね。こっちじゃファンシーすぎるし、こっちじゃ大人しすぎるし……。
いっそ絵でも描いてみて……。駄目駄目、私、絵心ないもの。
うーんうーん。
そんな調子で便せん選びも、封筒選びにも時間がかかってしまい、本文を書く頃にはすっかり日も暮れてしまいました。

いけない! オーブンすっかり忘れてた! 早く袋詰めしないと、鹿目さんが帰ってきちゃう。
私は大慌てでオーブンの前に戻ると、すっかり冷えている扉を勢いよく開けました。
ガチャン
あ、いい匂い……。見た目も美味しそうだし、あら熱も取れているみたい。軽くお砂糖をまぶして、袋詰めしちゃおっと。

私は事前に用意しておいた袋にお菓子を詰めると、リボンで丁寧に蝶結びをしました。
鹿目さんと同じ、赤いリボン。なんだか見てるだけで嬉しくなってくる。
いつかこうして、鹿目さんのリボンを結んであげるようになれたらなぁ。
そしたら、鹿目さんのさらさらとした柔らかい髪の毛、触り放題だし……。
鹿目さん、なんだか甘いイチゴの匂いがするのよね。なんでかな。石鹸もシャンプーどれを使っているか知っているけど、どれもイチゴの匂いなんてしないよね。不思議。

「どうしてだろうねー。私も不思議だよー」
「わわっ! か、鹿目さん!」
「えへへ。驚かせちゃってごめんね、ほむらちゃん」

振り返ると、いたずらっ子の目をした鹿目さん。えっ、なんでどうして?

「今日はお仕事早く終わったから、早めに帰ってきたんだ。ちゃんとただいまーって言ったよ?」
「ご、ごめんね鹿目さん。私全然気づけなくて」
「気にしないで。なんだか考え事してたみたいだし」
「……もしかして、全部聞こえてた?」
「なんで私からイチゴの匂いがするんだろー、って考えてるのは聞こえてたよ」
「……………」

かぁっと自分の顔が真っ赤に染まっていくのが分かります。は、恥ずかしすぎる……。

「ねぇねぇほむらちゃん。私、本当にイチゴの匂いがするの?」
「ちょ、ちょっとだけ」
「本当? 変じゃない?」
「変なんかじゃないよ! その、イイ匂いだなって思うし……」
「えへへ。そう言われると嬉しいな。でも、ほむらちゃんからはチョコの匂いがするね。何か食べてたのかな?」

クンクンと、鹿目さんが私の首筋の匂いをかぐ。ほぼ密着する体勢となった私は、まるで金縛りにあったように、指一本動かせません。

「か、かな、かなめさん」
「んー? なーに? ほむらちゃん」
「ち、近すぎる……よ」
「えー。いつもはもっとくっついてるよ?」
「で、でも……」
「ふふっ、ごめんね。ほむらちゃんが可愛いから、つい意地悪したくなっちゃった」

鹿目さんが、ふっと身体を離す。そして、ほのかに香るイチゴの香り。

「それで、何を食べてたの? 私にも分けてよ」
「え、えっとそれは」

ど、どうしよう。まだ手紙書き終わってないし、ラッピングまでは終わってるけど心の準備が……。

「ほむらちゃーん、隠し事はなしだよぉ。ね、教えてよ?」

鹿目さんが下から邪気のない瞳で覗き込んでくる。この瞳に、私は勝つ術を知りません。

「え、えっとね。食べてたんじゃないの。作ってたの」
「作ってたの? 何を?」
「その……ガトーショコラを。今日はバレンタインだし……」
「わぁ! ありがとう! ねえ、どんな感じなの? 見せて見せて!」
「う、うん。そこにあるよ」
「わー。綺麗な袋。それに私とおそろいのリボンだ。えへへ、なんだか嬉しいな」

鹿目さんが極上のとろけきった笑顔を私に向ける。
ああ、この笑顔を見るだけで、今までの苦労なんて全て吹き飛んじゃう。

「ね、ほむらちゃん。私、ほむらちゃんから直接渡して欲しいな」
「え、でも……」
「せっかくほむらちゃんが心をこめて作ってくれたんだもん。最後までほむらちゃんに頑張って欲しいの」
「う……うん」

私はおそるおそる袋を手に取ると、両手に乗せて鹿目さんに差し出した。
恥ずかしすぎるのと、鹿目さんの反応が怖いのとで、鹿目さんの表情をまともに見ることができません。

「わぁ……。ねぇねぇ、開けてもいいかな?」
「ど、どうぞ」
「わぁい! じゃあ、遠慮なく」

しゅるしゅると、布がこすれる音がします。顔を伏せているから分からないけど、きっとリボンが解かれたに違いありません。

「すごくいい匂い。それに、形も綺麗。ありがとう、ほむらちゃん♪」

鹿目さんの声が弾んでいます。その表情も、仕草も全部見たいのに、臆病な私は顔を上げることが出来ません。
でも、ちゃんと伝えなきゃ。今日こそは、ちゃんと、気持ちを。
こんなに頼りのない私をいつも大好きだって言ってくれて、いつも私を守ってくれる、私の大切な人に、最大限の気持ちを込めて。

「それじゃあ、いただきまー」
「ま、まどかっ、あのねっ!」

fin






えぴろーぐ

「ほむらちゃーん」
「なに? 鹿目さん」
「これなーに?」
「そ、それは、書きかけの便せんっ!」
「ねえねえ、何を書こうとしてたの? 宛名、私になってるよ?」
「そ、それは……」
「さっきはあんなにちゃんと……」
「や、やめて、言わないでっ」
「もう、可愛いなぁほむらちゃんは」
「え、なに? 鹿目さん、近い……きゃあ♪」

やっぱりfin
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